ポケモンスナップとそれ以外のことを書くブログ

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『ポケモンスナップ』ニャース世界記録が2年半ぶりに更新。命運を分けた不可視の仲間

_今年で発売19年目を迎えたニンテンドウ64のソフト『ポケモンスナップ』で大事件が起きた。
 2年半もの間、世界記録が更新されていなかったニャースのハイスコア世界記録が遂に更新されたのだ。そして、その世界記録更新の鍵を握ったのは【不可視のニャース】を写真に入れることだった。

 今回、叩き出されたスコアは4490点。ポケモンスナップの得点は10点刻みであり、今まで横並びで5人の保持者がいた4470点から、最小加点の10点ではなく20点と大きく水をあける結果となった。
 この20点の差は、主役のポケモン以外に同種のポケモンが映っている場合に加点される「なかま点」であり、【見えない仲間ニャース】がいかに大きく判定されるかによる。

   
新世界記録となった9B氏(Twitter:cuby_photo)の写真。見えないニャースが写されている。

 ではなぜ世界記録は2年半もの間、破られることがなかったのか。前世界記録保持者は実は5人存在しており、そのどれもが4470点であった。それらの記録では大きさ点がポケモンスナップの上限値である1000点、ポーズ点はニャースの限界値である1200点だった。そして中央に被写体を収めることでその2つが2倍され、(1000+1200)×2=4400点。残りの70点は仲間点である。今回の世界記録では大きさ・ポーズは前世界記録と同じだが、仲間点が90点となっており、そこで差がついている。この仲間点は前述の通り、見えない仲間ニャースを撮影することによって加点される。そして、仲間が見えないためにどの構図で写真を撮れば良いのか、どの写真を提出すれば良いのかが見た目では分からず、高い仲間点の写真選択が非常に困難なのである。
 また、そもそも仲間ニャースが写った写真自体の撮影が難しいのもニャース新世界記録を阻んでいた原因の一つだ。写っていても30~50点程度が多く、60点以上は稀である。さらにその稀な高得点を出した上で大きさ点が最大でなければならないという縛りがある。これらの難しさを端的に表したのが以下の画像だ。
画像内のセリフとは異なり、実際には達人でも仲間ニャースは見えないため、
撮影時は既出の仲間入り写真と似た構図で撮影することになる。      

 仲間80、90点自体は前例があったが、大きさが1000点に達した例はなく、そもそも大きさ1000点で仲間が80点以上になる構図が存在するかも不明だったために、今回の世界記録更新が衝撃的なものになったのだ。今後世界記録を更新するためにはWii版でのみ確認されている100点以上の仲間点を出すことが求められる。

 この見えない仲間については、なぜ見えていないのに仲間として判定されるのか未だ解明されていない。「本当の仲間は目に見えないんだ」と冗談交じりで言われることもあるが、昨今では奥の草むらに隠れているニャースが認識されているのではないかという説が有力だ。その根拠となるのが以下の画像である。



 仮想環境を用いて仲間ニャースに似た構図で撮影した写真をオブジェクト透過したものである。左上に2匹のニャースを捉えているのが分かる。このニャースが何かしらの理由で1匹または2匹ともが仲間として反映されているのではないかという説が有力だ。
 元々、この現象を初めて発見したNillew氏は草むらから出てくるニャースが飛び跳ねて出てくることに着目し、草むらの中にいる際にも耳が飛び出て判定されるのではないかという仮説を立てて試行した。望んだ結果は得られたもののオブジェクト透過で観測したところ、草むらにいる状態のニャースは飛び跳ねていないことが発覚したため、Nillew氏の狙い通り草むら内のニャースの耳が写されたわけではない。たまたま何かしらの原因で仲間が判定されただけであり、偶然が重なって発見された現象となった。

 今回世界記録を出した9B氏は、本格的にハイスコアアタックを始めたのは昨年からであるものの、新手法を駆使して数々の世界記録を打ち出してきた実力派だ。今や国内で最もレポート点数が高いプレイヤーとなっている。そんな9B氏に話を聞いてみた。

  
9B氏撮影のハイスコア世界記録の2枚。いずれも独自の手法で単独世界記録を樹立している。

*「ポケモンスナップのハイスコアアタックを始めたきっかけは何でしょうか?」

9B「大掃除の時に昔やっていたポケモンスナップを見つけて、やってみたらドハマりしたので本格的に始めました」

*「なぜニャースの世界記録を狙おうと思ったのでしょうか?」

9B「バタフリーのハイスコア更新を狙うついでにやりました。世界タイの4470点なら取れると思っていましたが、4490点が出た時は目を疑いました。嬉しいというか、呆気に取られた感じです」

*「今後は何に挑戦していきますか?」

9B「バタフリーのCyberscore内世界記録です。最終的にはレポートスコアを31万点にしたいと思っています*」
*開発スタッフの記録を含まない世界記録。バタフリーの世界記録は開発スタッフが保持しているが、驚異的な得点で写真もないためスタッフが大人の技を使ったという説まで出ている。レポートスコア31万点は現在世界でも4人のみ。


 ポケモンスナップは日本ではプレイヤーがまだ少ないが、海外では未だに根強い人気があり、RTAの動画も頻繁に投稿されている。今年のESA(ヨーロッパの巨大RTAイベント)でも採用され、コミュニティ内での議論も活発だ。日本でも1年の研究内容を発表しあうポケモンスナップ学会が今秋3年連続で開催される。来年で20周年を迎えるが、まだまだ目が離せないようだ。